日本養豚学会誌
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パルマハム中に生成する赤色色素の特性
坂田 亮一森田 英利乗松 毅牛 軍
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1999 年 36 巻 3 号 p. 124-129

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抄録

パルマハムは, イタリアの伝統的プロシュートハムの一つで, 豚の骨付き大腿肉を原料に海塩のみを用い長い熟成期間をかけて製品化され, 特有の美しい赤色を発現する。我々の研究において, この色素は, 発色剤を用いた一般の生ハム中の赤色色素ニトロソミオグロビン (NOMb) とは異なり, その生成に微生物が関与することを認め, 先に報告した。今回は, 既知の赤色ミオグロビン誘導体との比較を含め, パルマハム色素の特性について検討を行った。パルマハム試料の水抽出液を用い, 以下の項目について分光光学的解析を行い, 別途に調製した赤色Mb誘導体〔NOMbおよびオキシミオグロビン (O2Mb)〕と比較した。1) pHの影響: パルマハム試料の水抽出液をHClあるいはNaOHでpH3~10に調整。2) 温度と光照射の影響: 低温 (5℃) または室温 (20℃), ならびに蛍光灯照射 (2,500Lux) の組み合わせで1週間保持。3) 酸化剤の影響: 赤血塩 (0.5mM) を添加。4) 加熱の影響: 40~70℃で30分間保持。パルマハム色素抽出液のpH値の違い (pH3~10) による吸収スペクトル変化を調べた結果, 最大吸収はソーレー帯において423nm (pH5以上), 可視部で549および587nmの2ヵ所にみられた。pH6~10では吸収スペクトルに変化は観察されなかった。酸化型のミオグロビン (Mb) の吸収パターン (最大吸収波長505および630nm) は, どの調整pH値でも観察されなかった。抽出液の赤色は暗所に置くと5℃あるいは20℃で1週間保持しても安定で, その最大吸光度を維持した。赤血塩添加によって, NOMb およびO2Mbとも酸化され, その吸収スペクトルに変化を生じたが, パルマハム抽出液では変化は認められなかった。加熱によっても, その吸収パターンは他のMb誘導体と比較して安定であった。

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