人工臓器
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透析膜の細孔直径分布の測定
奥山 幸成佐々木 敬一金森 敏幸酒井 清孝
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1991 年 20 巻 1 号 p. 53-58

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抄録

透析膜の選択性に寄与する細孔直径分布を窒素ガス吸着法(BET法)および示差走査型熱量測定法(DSC法)を用いて測定した。BET法では透析膜への窒素ガス吸着量と、そのときの平衡圧から吸着等温線を作成し、Inkley法により細孔直径分布を算出した。DSC法では凍結した細孔内自由水の融解過程におけるDSC曲線を記録し、凝固点降下度および細孔内自由水の吸熱量より細孔直径分布を算出した。われわれが採用してきた湿潤透析膜の真空乾燥処理では、透析膜が中空糸軸方向と膜厚方向に収縮し、その割合は膜材質、含水率および膜厚によって変化すると考えられる。どの透析膜においても、凍結乾燥処理した方が真空乾燥処理よりもBET法により得られた細孔容積が大きくなり、凍結乾燥により湿潤状態に近い細孔容積が得られることがわかった。DSC法による透析膜の細孔直径分布の測定は簡便であり、BET法により求められた細孔直径分布と同様の傾向が得られ、その有用性が確かめられた。また、透析膜の細孔容積が大きいほどβ2-microglobulinの溶質透過係数および純水濾過係数が大きく、含水率、曲路率、膜面開孔率などの膜構造因子とともに細孔容積を考慮すれば、β2-microglobulinの除去に適した透析膜の至適設計が可能であると考えられる。

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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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