人工臓器
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低分子タンパク質のセラミックパウダーによる吸着除去―透析液清澄化の試み―
竹沢 真吾日台 英雄酒井 清孝
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1991 年 20 巻 1 号 p. 98-101

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抄録

透析膜の溶質透過性能の向上にともない、従来拡散で除去不可能と思われていた低分子タンパク質の除去が可能となった。しかし、拡散で除去し得るということは、透析液側に同程度の低分子タンパク質などが存在する場合、同様にそれらが拡散で血液側に移動することを意味している。抗原性を有するタンパク質などが移動した場合は種々の免疫反応を惹起し、新たな透析合併症をきたすことにもなりかねない。そこで、ダイアライザー直前でこれら低分子タンパク質などを除去すべく、一つの試みとしてセラミックパウダーを用いた吸着除去方法を検討した。
使用したセラミックパウダーは粒径100~200μm、細孔直径1,500Åである。ビーカーバッチによる吸着試験では、リゾチーム・チトクロムC・リボヌクレアーゼA・α-ラクトアルブミンの順に吸着がみられた。これは等電点の順と一致する。つぎに、濃度を1.000ng/mlに調整したリゾチームを用いて内径10mmの自作カラムに詰めたセラミックパウダーへの吸着実験を行ったところ、滞留時間2~11秒で除去率が変わらず、いずれも80%前後であった。すなわち、吸着はきわめて速やかに行われることがわかる。しかし、カラム出口濃度を厳密に0とすることはできず、低分子タンパク質の除去には限界がある。低等電点を有するタンパク質は高等電点タンパク質ほど吸着されないが、細孔径・表面基の操作により幅広い等電点における吸着能の向上が期待できる。

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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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