人工臓器
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パルス型薬物放出におけるゲル表面変化のON-OFFスイッチ機構
吉田 亮酒井 清孝岡野 光夫桜井 靖久
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1991 年 20 巻 2 号 p. 465-469

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抄録

感温性を有するイソプロピルアクリルアミドとアルキルメタクリレートのコポリマーゲルを用いて薬物透過・放出のON-OFF制御を行い、ポリマーの化学構造変化とゲル表面の収縮過程との関連を、ゲル内部における薬物移動の制御という立場から検討した。アルキル鎖長の異なるゲル膜を2-チャンバーセルの間にはさみ、抗炎症剤であるインドメタシンの膜透過性を20℃と30℃の段階的温度変化下で測定した結果、透過の完全なON-OFFを確認した。これは20℃から30℃に変化したときにゲル表面に生じる収縮層が薬物の透過を妨げることによる。再び20℃に下げると薬物は透過を開始し、30℃で薄い収縮層を形成するゲルでは大きな初期透過速度を示した。このことはOFF状態の間で薬物がゲル内部で移動することを示唆し、ゲルを放出制御素材とした場合放出速度の低下を抑制する。ポリマーのアルキル鎖長を変えることで表面収縮層の生成過程が変化し、ゲル内部の薬物移動を制御できる。

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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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