昭和医学会雑誌
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ヒト大腿四頭筋の筋線維構成について
小林 公一
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キーワード: 大腿四頭筋, 筋線維構成
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1991 年 51 巻 2 号 p. 186-196

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抄録

大腿四頭筋各筋 (大腿直筋, 外側広筋, 内側広筋, 中間広筋) の筋線維構成を, 相互に, また, 他の骨格筋と比較, 検討し, 各筋の機能的特徴を明らかにした.研究対象は10%ホルマリン水注入固定の解剖実習屍10体 (男性5, 女性5) から得られた大腿四頭筋である.筋重量を測定後, 各筋の最大幅部の筋横断片を採取し, 常法に従ってセロイジン包埋, 20μm薄切, HE染色を施した.これらの組織標本について, 筋腹横断面積, 1mm2中の筋線維数, 筋線維総数, 筋線維の太さ, および密度を計測, 算出した.結果は次のごとくである.1) 筋の重量と筋腹横断面積は外側広筋が最大で, 以下, 内側広筋, 中間広筋, 大腿直筋の順であった.各筋とも男性が女性よりも優る傾向がみられた.2) 1mm2中の筋線維数は, 大腿直筋が758で最も多く, 外側広筋がこれに次ぎ, 内側広筋 (474) と中間広筋 (461) の間には差が認められなかった.性差は認められなかった.3) 断面の筋線維総数は, 外側広筋, 内側広筋, 大腿直筋, 中間広筋の順に多く, 各筋とも, 男性が女性より優る傾向がみられた.4) 筋線維の太さは, 中間広筋が1325μm2で, 内側広筋と外側広筋がこれに近く, 大腿直筋 (1018μm2) は他よりも小であった.各筋とも男性の方が女性よりも優っていた.ヒトの他筋に比べて比較的大きな筋群に属することになり, 下肢筋の特徴と考えられた.5) 筋線維の密度は大腿直筋が71%で最も高く, 外側広筋65%がこれに次ぎ, 以下内側広筋59%, 中間広筋56%の順であり, 各筋とも男性が女性よりも優っていた.以上のことから, 大腿四頭筋の膝関節伸展作用では広筋群の働きが大であり, 特に外側広筋の関与が最も著しいと考えられた.

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