人工臓器
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微小温度変化に対する温度応答性パルス型ドラッグデリバリーの検討
吉田 亮酒井 清孝岡野 光夫桜井 靖久
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1992 年 21 巻 1 号 p. 244-248

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抄録

感温性のイソプロピルアクリルアミドとアルキルメタクリレートのコポリマーゲルを合成し、このゲルによる薬物放出のON-OFF制御の可能性を検討した。ポリマーの化学構造および温度の変化幅を変え、表面収縮層の形成による放出制御メカニズムを高分子マトリックスの動的変化に注目して検討するとともに、ON-OFF制御が可能となる最小温度変化幅を追求した。ゲルからのインドメタシン放出速度を連続的に測定した結果、一般的に低温で放出が起こり高温で放出が停止する傾向を示した。しかし温度変化幅が大きい場合には温度上昇直後に鋭い放出ピークが生じ、そののち放出速度は減少した。これは表面収縮層形成による急激な薬物の搾り出しによると考えられた。また温度変化幅が小さくなると、温度上昇後ゲル内部に蓄積する圧力により遅れ時間を伴う放出ピークが新たに観察された。収縮層の形成・消失に応答する放出挙動にポリマーのアルキル鎖長および温度変化幅がどのように影響するかをその動的変化に着目して検討し、薬物のON-OFF放出パターンを制御するゲルの構造について考察した。

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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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