1992 年 21 巻 3 号 p. 867-872
薬物の血漿タンパクへの結合は一種の吸着現象と見なすことができる。タンパク結合性薬物の透析器内における挙動を明らかにするために、実験とシミュレーションを行った。数種類のセフェム系抗生物質と人血清アルブミンを用いて、吸着平衡及び吸着速度を測定した。吸着平衡実験より、薬物総濃度の増加に対してタンパク結合率が増加する抗生物質と、減少する抗生物質のあることがわかった。吸着速度実験より、抗生物質によってHSAとの吸着速度が大きく異なるこ、とが明らかになった。また、実験結果をもとに透析器内の薬物輸送現象を表すモデルを作成し、シミュレーションを行った。その結果、結合状態及び遊離状態の抗生物質の挙動は吸着速度の影響を受けて大きく変化したが、血液中の総薬物濃度で計算したクリアランスは、吸着速度にそれほど大きく影響されなかった。