透析膜の微小荷電は電解質の膜透過に影響を与えることが報告されているが、中空糸透析膜の荷電量を直接実測することは技術的に困難である。本報では、生体膜の膜電位測定法として知られている蛍光法を応用することにより、膜荷電状態を直接測定する方法について検討した。蛍光物質として用いたl-anilinonaphthalene-8-sulfonic acid(ANS)は、疎水性部分をもつ物質とイオン的に結合すると蛍光量が増大する性質を有する。膜構造が等しく、正と負の荷電をもつ2種類の再生セル[コース製中空糸透析膜について、蛍光の強度測定を行った。その結果ANSの蛍光強度は、膜荷電状態および周囲の電解質濃度変化に伴う荷電状態の変化を、定性的に表していることが示された。さらに、膜に対する電解質であるANSの結合量を求めることにより、膜荷電量の定量化および膜構造の解析ができる可能性が示唆された。