人工臓器
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透析膜の有効荷電密度と無機リン透過性
萩原 一仁金森 敏幸酒井 清孝
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1992 年 21 巻 3 号 p. 952-957

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抄録

長期透析患者における骨代謝障害の原因となる無機リンの透析膜透過性を論じるには、膜の荷電状態の指標である有効荷電密度を知ることが不可欠である。しかし中空糸膜については、膜電位の測定が困難ぐあるため、透折膜の持つ荷電が無機リン透過性に与える影響を定量的に把握するに至っていない。そこで、中空糸膜(再生セルロース(RC)膜、Hemophan膜)と同じ素材からなる平膜(膜厚16μm)の膜電位を測定し、中空糸膜における有効荷電密度と無機リンの透析膜透過性との関係について検討した。また中空糸膜のζ電位を測定し、無機リン透過性をζ電位で評価できるかどうか検討した。その結果、平膜の膜電位測定から有効荷電密度の絶対植が等しいと考えられたRC膜とHemophan膜における無機リンの溶質透過係数は、負荷電膜であるRC膜より正荷電膜であるHemophan膜の方が高く、溶媒に純水を用いた場合より生理的食塩水を用いた場合の方が高かった。またζ電位は両者とも負値を示したが、その絶対値が小さいHemophan膜の方が高い無機リン透過性を示した。両者の細孔構造が等しいことから、無機リンの溶質透過係数の差は電気的抵抗の違いによると考えられる。これより無機リンの透析膜透過には膜の有効荷電密度が影響し、透析膜の正荷電性が無機リン透過性を促進することがわかった。また膜素材の等しい中空糸膜の無機リン透過性は、ζ電位で評価できると考えられた。

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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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