人工臓器
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タンパク質の吸着が膜の荷電に及ぼす影響
小久保 謙一金森 敏幸酒井 清孝
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1993 年 22 巻 1 号 p. 74-78

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抄録

タンパク質の吸着による表面荷電状態などの材料表面の性質の変化は、血栓形成などに影響すると考えられる。そこで、チトクロームCの吸着による膜の荷電状態の変化をポリマーブレンド比の異なる三種類のポリエステル系ポリマーアロイ(PEPA)膜とポリアクリロニトリル(PAN)膜について、吸着前後でのζ電位の値を測定し評価した。また、表面性質の変化の速さを吸着速度を用いて評価した。PEPA膜、PAN膜ともにζ電位は負の値を示し、正に荷電しているチトクロームCが吸着するとその絶対値が小さくなった。膜の表面荷電状態は膜自身の荷電だけでなく、吸着したタンパク質の荷電の影響を受けると考えられる。また、PEPA膜の吸着速度は拡散律速であり、PAN膜では拡散速度が速く、タンパク質と材料の吸着反応の速さの違いが吸着速度に影響する。抗血栓性に優れているPAN膜は、吸着反応速度が速い抗血栓性のあるタンパク質が吸着していると考えられる。

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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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