人工臓器
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人工神経の研究―ゼラチンチューブによる末梢神経再生チャンネルの開発―
李 暁光中村 達雄清水 慶彦富畑 賢司筏 義人遠藤 克昭
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1993 年 22 巻 2 号 p. 364-369

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抄録

我々は、長さ10mmのラットの坐骨神経の欠損を熱脱水架橋処理ゼラチンチューブ及びグルタールデヒド処理ゼラチンチューブを用いて連結し、坐骨神経の再生回復の状態を観察した。熱架橋処理ゼラチンチューブ群では1ヶ月後にはチューブの壁内に血管網が形成され、2ヶ月後にはチューブは分解吸収されており、坐骨神経が再生していた。手術後2ヶ月及び4ヶ月において行ったOsmium染色、Bodian染色及びS-100蛋白染色による形態的観察では、2ヶ月から再生軸索が数多く認められ遠位端に達しており、髄鞘も再生していた。WGA-HRP染色では、脊髄前角の運動神経細胞と後角の知覚神経終末が染色された。機能的にも電気刺激による誘発筋電図、大脳体性感覚誘発電位が回復していた。一方、グルタルアルデハイド処理ゼラチンチューブ群では神経の再生は認められなかった。これらの結果から、熱脱水架橋ゼラチンチューブは神経再生チャンネルとして優れた医用材料になり得ると結論された。

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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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