1993 年 31 巻 3 号 p. 346-351
77歳の男性が, 四肢の知覚過敏を主とする多発性神経炎にて発症し, 胸部X線, 喀痰細胞診, 頸部リンパ節生検にて肺小細胞癌 (SCLC) と診断された. 入院時血清Na, 血清浸透圧はそれぞれ114mEq/l, 251mOsmol/kgと著明に低下していたが, 尿中Na, 浸透圧はそれぞれ139mEq/l, 567mOsmol/kgと保持されており, ADH分泌異常症候群 (SIADH) と診断した. また神経伝導速度も遅延していた. 多剤併用療法を行い, 胸部異常陰影の消失とともに, 知覚過敏, 神経伝導速度は改善し, 血清Naも正常化し退院したが, 11ヵ月後, SCLCが再発するとともに多発性神経炎が再燃し, 同時にSIADHも出現した. 多発性神経炎, SIADHはいずれもSCLCの病勢とよく相関しており, 腫瘍随伴症候群と考えられた.