1993 年 22 巻 3 号 p. 1025-1030
メッシュ式人工気管による高張力下での置換実験を行った。この人工気管はMarlex® meshとpolypropylene stentによる支持体からなり、これにコラーゲンを複合化したものである。雑種成犬を用い、吻合時の両端の張力が900-1000g重になるように頸部気管を管状切除(6-8cm、11-16気管軟骨輪)、人工気管で置換した。この際4頭は置換のみ(A群)、6頭はさらにシリコンチューブを術後1カ月間置換部に内挿した(B群)。全例縫合不全は認めなかった。A群では局所感染、過剰肉芽による内腔狭窄が目だったが、B群では経過良好であり、術後3カ月で屠殺した犬では、人工気管は宿主気管と完全に一体化し、内腔の上皮化も見られた。以上より我々の人工気管は張力のかかった条件下でも置換に耐え、臨床応用が可能性であることが示唆された。またシリコンチューブの一時的内挿は材料の感染を予防するのに有用と考えられた。