日本透析療法学会雑誌
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血液透析時におけるvitronectin値の変動に関する検討
長宅 芳男和田 淳槇野 博史四方 賢一熊谷 功粟田 敏江森岡 茂小倉 俊郎太田 善介
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1993 年 26 巻 9 号 p. 1539-1542

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抄録

血漿vetronectin (VN) 値は, 血液透析患者では低値を示すが, 透析歴が長くなるほど, より低値を示すことが知られている. そこで, 今回我々は, 同一患者に対し, regenerated cellulose (RC膜), cellulose triacetate膜 (CTA膜), polysulfone膜 (PS膜) の3種類の透析膜を順次変えて血液透析を施行し, その際の血漿VN値の変動を測定することにより, これらの透析膜で血漿VN値の変動に有意な変化があるか否かを検討した. また, 抗凝固剤としてのheparinの影響の有無を検討するため, 抗凝固剤として, heparinを使用した時とnafamostat mesilate (NM) を使用した時の, 血漿VN値の変動を比較検討した.
その結果, すべての膜において, 透析開始前の血漿VN値は, 正常値より低値を示した. 血漿VN値の変動では, RC膜のみ有意な変化を認め, 透析開始後15分の血漿VN値が, 開始前に比べ有意に低値を示したが, CTA膜, PS膜には, 有意な変動を認めなかった. 従って, 使用している透析膜の種類により補体活性化の程度が異なり, VNの消費の程度が異なってくることが示唆された. また, 抗凝固剤による検討では, すべての膜において, heparin使用時とNM使用時とでは, 血漿VN値の変動に関し有意差を認めなかったため, VNがheparinと結合することによりVNが消費されるという説を支持する結果は得られなかった.

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© 社団法人 日本透析医学会
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