人工臓器
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血液透析膜に含まれる水の状態と膜内拡散係数の関係
金森 敏幸酒井 清孝福田 誠
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1994 年 23 巻 3 号 p. 578-584

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抄録

血液透析膜の基本性能として、溶質透過性および透水性が挙げられる。溶質は膜に含まれる水の中を拡散し、水は膜内外で入れ替わることにより膜を透過するため、膜内の水の状態は溶質透過性および透水性に影響すると考えられる。本研究では、7種類の高分子素材からなる31種類の血液透析膜について、膜に含まれる水の分布状態および体積を測定した。その結果、膜内には分子運動性が異なる3種類の水が存在し、その比率は膜素材によって大きく異なることが明らかになった。再生セルロース系高分子の血液透析膜では、膜内の水の大部分が高分子鎖によって強く束縛を受けており、その内部の溶質拡散現象は疎水性高分子膜におけるそれとは異なることが明らかになった。さらに、自由体積理論によって再生セルロース系高分子の血液透析膜の膜内拡散現象を解析したところ、5種類の溶質の膜内拡散係数を膜内の水の分布体積によって表すことができた。

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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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