日本臨床細胞学会雑誌
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子宮頸部紡錘細胞癌の1例
上島 朋子福田 剛明江村 巌渡辺 徹白浜 美佳児玉 省二田中 憲一内藤 眞
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1994 年 33 巻 1 号 p. 53-58

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抄録

細胞診でClass Vと診断され, 発見された子宮頸部腫瘍である.腫瘍細胞の大部分は紡錘型で, 中等度の集塊形成を示していたが, 一部に重厚な胞体を持つ集籏性のある悪性細胞がみられたため, 扁平上皮癌が最も疑われた.その後の生検および摘出臓器の組織所見では, 子宮頸部の扁平上皮粘膜層に連続して紡錘細胞が束状配列を示しながら増殖している肉腫様腫瘍であった.扁平上皮癌と判断できる成分は認められず, 組織学的には平滑筋肉腫と診断された.しかし免疫組織学的には, ケラチンおよびビメンチンが陽性であり, また電顕所見からは, 少数の細胞にトノフィラメント様マイクロフィラメントとデスモゾームが観察された.これらの所見から扁平上皮癌の一亜型である紡錘細胞癌と判断した.本症例のように, 細胞診において肉腫様細胞とともに上皮由来の腫瘍細胞を認めた場合, 悪性ミューラー管性混合腫瘍や肉腫のほかに, 紡錘細胞癌も鑑別に考慮すべきである.

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