日本薬理学雑誌
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ラット肝臓の虚血-再循環障害に対するリボ化プロスタグランジンE1(リボPGE1)の抑制効果
江頭 亨高山 房子工藤 欣邦山中 康光
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1995 年 105 巻 2 号 p. 77-86

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抄録

末梢血管拡張および血小板凝集抑制作用を有するリボ化プロスタグランジンE1(リボPGE1)をラットの虚血―再循環肝障害に適用し,その効果を抱接プロスタグランジンE1(抱接PGE1)と比較した.90分間の肝虚血で,再循環2日以内に全例死亡したが,リボPGE1の虚血および再循環前の2回投与で,生存率は濃度依存的に増加した.抱接PGE1投与では溶媒投与群と同様に生存率は低値であった.虚血-再循環で増加した血中GOT,GPT,LDH値および脂質パーオキサイド含量は,リボPGE1投与で有意に減少した.また,リボPGE1投与で病理組織学的にも肝障害の抑制傾向が認められた.劇症肝障害で見られる芳香族アミノ酸含量増加を抑制したが,著明な変化ではなかった.このモデルにおけるエンドトキシン含量,プロトロンビン時間およびICG試験に対して,リボPGE1および抱接PGE1は著明な変化を示さなかった.一方,30分虚血―12時間再循環の軽症肝障害モデルに対して,リボPGE1は血中GOT,GPT,LDH値および脂質ヒドロパーオキサイド含量の増加を有意に減少させた.これらの結果より,リボPGE1は虚血-再循環により惹起される多核白血球からのスーパーオキサイドの産生を抑えることによりその攻撃から肝細胞膜を保護し,末梢血管拡張および血小板凝集抑制作用により肝循環を正常に保つことで虚血-再循環肝障害を軽減しており,肝臓の切除・移植およびその後に生じる各種臓器障害の抑制に有効な作用を示す薬物である可能性を示唆している.

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