1995 年 24 巻 3 号 p. 707-712
イオンの膜透過は、透析膜の荷電と構造の両方に依存する。しかし、実際の透析においては、膜に血漿タンパク質が吸着し、膜構造と膜荷電の双方が変化する。そこで、透水性の異なるPS-600とPS-620からなるダイアライザ(有効長25cm、中空糸本数700本)に、水溶液中で正に荷電するチトクロームCあるいは負に荷電するα-ラクトアルブミンを平衡吸着させ、吸着前後における尿素の溶質透過係数から膜構造の変化を、有効荷電密度の変化から膜荷電の変化を評価した。その結果、いずれのタンパク質吸着後においても尿素の溶質透過係数は減少し、膜構造の変化が示唆された。また、有効荷電密度はチトクロームC吸着後には減少し、α-ラクトアルブミン吸着後にはあまり変化しなかった。これより、タンパク質の吸着により膜構造、膜荷電が変化し、膜荷電の変化はタンパク質により異なることが分かった。