1995 年 37 巻 2 号 p. 329-336
歯肉縁下プラーク細菌の定着・増殖における細菌バイオフィルムの関与について検討するため, 重度成人性歯周炎に罹患し抜去された18歯を走査型電子顕微鏡を用いて検索した。その結果, 歯肉縁下プラークの歯冠側1/3部では球菌, 桿菌などがglycocalyx (多糖外皮) 様の網状構造物により結びつきフィルム状集落を形成していた。中央1/3部では, 血球に種々の細菌種が凝集したような像がみられた他フィルム状の集落も観察され, フィルム内より遊出してきたと思われる線状菌や既に遊離した細菌の抜け穴が認められた。根尖側1/3部では, 多種類の細菌がglycocalyx様の網状あるいは粘液様構造物を介して集落を形成しており, 中央1/3部の細菌叢よりさらに複雑な様相を呈していた。また, いわゆるプラークフリーゾーンと称される領域では, 菌体が直接歯面に接触している細菌だけでなく, 菌体表層をglycocalyx様の網状構造物に被覆され, その構造物を介して根面に付着している細菌種が観察された。以上の結果より, 歯肉縁下プラークの定着・増殖には部分的に細菌バイオフィルム形成メカニズムが関与していることが示唆された。