子宮がん集団検診の頸部細胞診が端緒となって発見された卵管上皮内癌の1例を経験したので報告する. その細胞診像は, きれいな背景の中に, 大型で厚みのある重積性腫瘍細胞集塊としてみられ, 核は大型類円形で, 大小不同, N/C比の増大, 配列の乱れを示し, 細顆粒状クロマチンの密な分布と肥大した核小体を伴っていたことから, 腺細胞系由来の悪性細胞でクラスVと診断した. 子宮腔内細胞診および腹腔洗浄液細胞診でも同様な悪性細胞が出現した. 摘出左卵管は, 肉眼的に病変は明らかでなかったが, 組織学的に卵管上皮細胞の多層化と乳頭状増殖, 核異型, 核分裂像を呈する間質浸潤のない上皮内腺癌を認めた. 手術後, 化学療法を3コース施行し, 2年10カ月経過後も再発徴候を認めていない.
本疾患はきわめてまれで, 術前に正しく診断することは困難とされる. 子宮頸部あるいは子宮体部の細胞診で腺癌細胞が出現し, 組織診で悪性病変が明らかでないかきわめて少量の場合には, 本疾患を疑うことが必要である.