1995 年 33 巻 11 号 p. 1283-1287
症例は68歳, 男性. 両側下顎歯肉部の腫瘤を主訴に岡山大学口腔外科を受診し, 生検の結果転移性腫瘍を疑われ, 精査目的にて岡山予防会病院に入院となった. 胸部X線写真およびMRIにて左上葉上区切除後に発生した慢性膿胸の背側に, 胸壁に浸潤する腫瘤が認められ, 同部の経皮針生検と歯肉部の腫瘍の生検組織標本から肺大細胞癌と診断された. 入院時検査で好中球主体の著明な白血球増多 (48,100/μl) を認め, G-CSF 産生腫瘍を疑い, G-CSF 血中濃度を測定したところ246pg/mlと上昇していた. 化学療法を行い, 腫瘍の縮小とともに G-CSF 血中濃度も66pg/mlまで低下したが, 治療開始後16日目に急死した. 剖検時に得られた肺原発巣および歯肉転移巣の腫瘍組織の免疫組織学的検討により腫瘍細胞内に G-CSF を証明し得た.