1996 年 25 巻 3 号 p. 664-669
臨床における透析膜の性能低下の一因に、血液接触後の膜構造変化による拡散透過性の低下がある。近年開発された高性能透析膜の多くは非対称構造を有しており、その性能低下の起こり方は膜の非対称構造によって異なると考えられる。そこで、非対称構造を有するポリスルホン膜を用いて、血漿タンパク質吸着前後で吸光法により分子量の異なる溶質の膜内拡散係数と溶質透過係数を測定した。血漿タンパク質の吸着により、膜内拡散係数比は小さな溶質ではほとんど減少しなかったのに対し、大きな溶質では顕著に減少した。また、非対称構造を有する高透水性透析膜の場合、従来の透析膜に比べて特に小さな溶質の膜抵抗が小さかった。そのため、これらの膜からなる透析器では、タンパク質の吸着によるクリアランスの低下が少ない溶質の分子量範囲が広い。