1997 年 11 巻 1 号 p. 95-99
症例は48歳の女性.主訴は咳嗽, 喀痰, 発熱, 血痰.気管支拡張症の診断にて保存的療法を受けていたが, さらに血疾出現したため精査を受け, 気管支結石症と診断された.気管支結石は左下葉気管支入口部に陥頓し可動性なく, 気管支鏡では摘出不可能であった.その後も症状を繰り返すため, 左肺下葉切除術, 結石摘出術, 石灰化リンパ節摘出術を施行した.術後経過は良好であった.気管支結石は家族歴, 既往歴, 石灰化リンパ節の存在, 結石の形状, 成分より結核との関連が疑われた.病理組織学的には, 左下葉は無気肺, 線維化が目立ち, 気管支を中心として小膿瘍が散在, その中にグラム染色陽性, メセナミン銀陽性の分枝を持つ糸状構造物を認め肺ノカルジア症が考えられたが, 培養で同定されず, ノカルジア症の疑いと診断された.