1997 年 26 巻 3 号 p. 734-738
現在透析に用いられている高透水性の膜の多くは非対称構造を有しておりこのような膜では透析時に溶質透過方向により透過係数が異なる。この原因は非対称膜に見られる濾過方向による阻止率の差であると予想される。この関係を解明すれば血液からは溶質が抜けやすく、透析液からはエンドトキシンなどが侵入しにくい理想的な透析膜の開発が可能になる。そこで溶質にデキストランを用い数種の対称膜、非対称膜についてその阻止率と総括物質移動係数を測定した。その結果、均質膜では濾過方向による阻止率の差はみられず透析時の溶質透過の異方性もみられなかった。中空糸内側に緻密層を有する膜では外側から内側に濾過を行った方が阻止率が小さく、透過係数は大きくなった。中空糸外側に緻密層を有する膜では阻止率、透過係数の大小とも逆になった。したがって、透析時の溶質透過の異方性は非対称膜のみにみられ、その原因は濾過方向による阻止率の違いに起因する。