産婦人科の進歩
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マウス胚発生能に及ぼす体細胞との共培養の効果と
廣瀬 雅哉喜多 伸幸石 紅高倉 賢二野田 洋一岡部 英俊
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1997 年 49 巻 5 号 p. 528-542

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抄録

各種体細胞との共培養を行い,その胚発育に及ぼす影響を検討し,これに関与する胚発育促進因子の同定を試みた.マウス前核期胚を,ウサギ卵管上皮細胞,ウサギ子宮内膜上皮細胞,ヒト皮膚線維肉腫細胞,ヒト脂肪肉腫細胞,モルモット腹腔マクロファージ,マウス腹腔マクロファージとそれぞれ共培養した.ウサギ卵管上皮細胞との共培養はcontrolと同様の胚発育を示した.ウサギ子宮内膜上皮細胞,ヒト皮膚線維肉腫細胞,ヒト脂肪肉腫細胞との共培養ではcontrolに比し胚発育は有意に抑制された.モルモット腹腔マクロファージ,マウス腹腔マクロファージとの共培養ではcontrolに比し胚発育は有意に促進された.モルモット腹腔マクロファージとの共培養によって得られた胚を構成する細胞数はcontrolに比し有意に増加したがvivo胚と比べると低値であった.モルモット腹腔マクロファージとの共培養においては,供する細胞数を減ずるにしたがい胚発育促進効果は有意に低下した.細胞回収から共培養開始までの時間を延長すると胚発育促進効果が有意に低下した.conditionedmediumによる胚培養では胚発育はむしろcontro1に比し有意に抑制された.モルモット腹腔マクロファージの培養上清のアミノ酸は25種が検出されたが,いずれも低濃度であった.サイトカイン,成長因子はIL-1βが100pg/mlであったが,他のもの(IL-1α,IL-1β,IL-6,IFN一α,GM-CSF,G-CSF,TNF一α,TGF一α,β1,PDGF,IGF-1,II,EGF)はヒト,あるいはラットに対する抗体を用いた限りでは検出されなかった.プロスタグランジン類はPGF2α が325.0±318.2pg/ml,PGE2が635.Opg/ml,6keto-PGF1α が235.Opg/ml,TXB2が2180.Opg/mlであった.共培養にindomethacinを添加しても胚発育に変化はなかった.共培養で得られた胚を偽妊娠マウスに移植しても着床率は改善しなかった.以上よりモルモット腹腔マクロファージにおける胚発育促進効果はサイトカイン,成長因子およびプロスタグランジン等を除くきわめて不安定な物質によるものであると考えられた.また,モルモット腹腔マクロファージとの共培養は形態的に良好な胚発育促進効果がみられたにもかかわらず着床率の向上は認められず,必ずしも胚発生効率を高めるものではないことが示された.〔産婦の進歩49(5);528~542,1997(平成9年9月)〕

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