環境感染
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県西部浜松医療センター医療従事者における針刺し・切創事故に関するサーベイランスとコスト試算
浦野 美恵子矢野 邦夫脇 慎治室久 敏三郎
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1997 年 12 巻 2 号 p. 94-98

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抄録

HIV感染者への医療行為による職務上HIV感染の報告がなされて以来, 針刺し事故などの血液・体液曝露事故がクローズアップされてきた.事故後の適切な処置の重要性はいうまでもないが, 予防策を立てて事故が生じないように努力する必要性が強調されている.今回, 我々は米国やカナダの多くの病院で使用されている職務感染事故予防のためのサーベイランスシステム (EPINet) を用いて, 当院における針刺し・切創事故に関するサーベイランス (1994年6月~1996年3月) を施行した.報告された74件の針刺し・切創事故の内訳は, 職種別では看護婦が全体の89.2% (66件) ともっとも多かった.関連器材としては, 「使い捨て注射器」 (18件) と「翼状針」 (16件) での事故が多く報告され, 事故発生の状況は, 「使用後廃棄までの間」 (27件) と「リキャップ時」 (19件) に多発していた.また器材使用の目的は, 「血管確保」 (20件), 「経皮的注射」 (13件), 「静脈採血」 (10件) などであった.発生した事故のうち, 安全装置付器具により予防可能と思われた事故は「使い捨て注射器」では16件, 「翼状針」16件, 「真空採血針」3件, 「接続されていない針」9件, 「静脈留置針」6件と事故全体で54件であった.
また同時に発生事故のフォローアップに要する費用を試算した.その結果, 労働災害対策として要する費用は一人当たり97,307円であったため, 安全装置付き器材を導入することにより削減可能であったと推定される費用は, 調査期間22ヵ月で5,067,468円であった.安全器材は従来の器材に比して割高であることが知られているが, 労働災害関連費用を考慮すると, むしろ病院全体としての経費削減が可能であると思われる.

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© 日本環境感染学会
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