1998 年 27 巻 1 号 p. 269-274
生体材料のポリエーテルタイプポリウレタン(PEU)に劣化が起こることが明らかとなっている。PEUの優れた機械的特性と生体適合性を温存し、しかも劣化を減少させる目的で、最近ポリエーテルタイプに代わりポリカーボネートタイプのポリウレタン(PCU)が開発されている。本研究では、これらPCUのin vitro加速劣化試験と、我々が開発したepifluorescent video microscopy (EVM)装置を用いた抗血栓性評価を行い、従来のPEUと比較した。加速劣化試験後、PEUは表面が物理的・化学的に劣化することが明らかとなった。一方、PCUではこのような変化は認められなかった。EVM実験の結果より、PCUはPEUに比べ同等またはそれ以上に血小板の粘着を抑制することがわかった。以上の結果から、埋込み型人工心臓をはじめとする長期使用の循環系デバイスの構造材料としてセグメント化ポリウレタンを選択する場合、現状ではPCUを第一選択とするべきであると考える。