日本透析医学会雑誌
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透析膜の性能評価 -第42回日本透析医学会教育講演より-
酒井 清孝
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1998 年 31 巻 4 号 p. 253-266

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抄録

透析治療に用いられている透析膜の素材には大別してセルロースと合成高分子がある. 透析膜は均質膜であるが, 最近では非対称膜が用いられている. 分子量が大きい病因物質の分離速度 (クリアランス) を大きくするには, 分離に寄与する緻密なスキン層は薄いほど好ましい. その機械的強度を保持するための粗な支持層とから構成された非対称膜の有利性が大いに評価されている.
透析器のクリアランスおよび濾過係数は透析膜の性能と透析器の設計に依存する. すなわち濾過係数が数ml/m2hrmmHgの透析膜では分子量が1,000以上, 濾過係数が数十ml/m2hrmmHgの高性能透析膜では分子量が10,000以上の溶質の分離速度は透析膜律速である. すなわち分子量の大きい尿毒症病因物質の除去は透析膜の透過性能 (拡散透過係数および濾過係数) に左右される.
基本的には, 透析膜の両側の流体の浸透圧差をゼロに設定し, ある一定の膜間圧力差で一定時間に得られた濾液量のデータから透析膜の濾過係数が求められる. また拡散透過係数は濾過流束をゼロに設定した時に得られる溶質濃度と拡散流束のデータから求められる. 濾過係数を測定するときに透析器内を血液と透析液が流れていると, 両流体の流動方向に (静) 圧力が変化するため, 膜間圧力差を正しく求めることができない. そこで透析器を完全濾過で操作すると, 正しい濾過係数が求められる.
本稿では, 透析膜の性能評価について, 透析膜の拡散透過係数および濾過係数の測定法, さらに透析膜の構造と透過性の関係について述べたい.

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