1998 年 27 巻 2 号 p. 545-550
Jellyfish弁の耐久性を低下させる要因と考えられる弁葉へのカルシウム沈着の発生メカニズムを検討するため, 力学的特性に着目して弁閉鎖時の弁葉に生じるひずみを有限要素法を用いて解析した. 弁葉材料の物性値は単軸引張試験から取得し, 弁閉鎖荷重は動物実験から得た弁閉鎖時の平均大動脈圧を用いた. 4節点膜要素を使用し, 解析は幾何的対称性を考慮して全体の1/12のモデルについて行った. その結果, ひずみは主に2ヶ所で集中することが確認された. そこで, さらにこの2ヶ所の厚さ方向のひずみ分布を調べるために8節点六面体要素を使用して簡易化したモデルで弾性解析を行った. これらの結果, 解析で判明した高引張ひずみ域と動物実験結果で観察されたカルシウム沈着位置は見事に対応していた.
以上より, 変形によって生じる引張ひずみがカルシウム沈着現象の発生に大きな影響を与えるということが, 数値解析および動物実験の両面から明確にされた.