低線量率192Ir線源を用いた気管, 気管支の腔内照射が施行された症例を3施設から集計し検討した. 治療方法・症例
1987年4月から1996年11月までに133例149病巣の気管気管支に病巣のある癌に対し腔内照射が施行されていた.
1例を除いて, すべて肺癌であった. 治療の目的は, 根治から姑息例まで多岐にわたっていたが, 内視鏡的肺門部早期癌 (早期癌), 肺癌手術後の気管気管支壁内再発例 (手術後再発例), 早期癌を除く肺癌 (進行癌) の症例が多かった.
放射線治療は外照射と腔内照射の併用を原則としていた. 外照射はライナック4～10MVX線, 腔内照射は192Ir thin wire (1480 MBq) を使用, 多くの症例の一回線量は外照射1.8～2.2Gy, 腔内照射4.0～6.0Gyで施行されていた. 総線量は施設, 症例ごとにばらつきがあった.
結果
治療線量と再発率, 生存率に有意差はなかったが, 早期癌では腫瘍径が20mmを越す症例で再発が有意に多かった.
放射線障害としては, 放射線肺炎, 気管支狭窄, 粘膜潰瘍, 出血などがあり, 致死的障害は2例であった.
早期癌では腔内照射線量<25Gy, 外照射線量>40Gy, 総線量>65Gyで障害の発生が有意に高かった.
早期癌の5年overall survival 52.1%, cause specifi csurvival 85.8%, disease free rate 82.2%であり, 手術後再発例の手術施行時からおよび本治療開始時からの5年overall survivalはそれぞれ54.7%, 29.3%, cause specinc survivalは62.1%, 39.4%, 進行癌では3年overall survival, 20.1%, cause specific survival 38.4%であった.
まとめ
本治療法は早期癌や手術後再発例のように病巣が小さく, 気管, 気管支壁周囲に限局している症例には良い適応と思われた.
早期癌について再発, 障害について有意差のある結果が示されたが, 投与線量の偏り, 障害の評価などの問題があり, また, 手術後再発例や進行癌については治療数が少く, それぞれの症例群について線量と再発, 放射線障害などを十分に検討することができなかった. 投与線量, 障害の評価についての基準を設け, prospectiveな検討が必要である.
