1998 年 27 巻 5 号 p. 263-269
逆行性脳灌流法の至適灌流条件を, 生体脳微小循環観察法を用いて検討した. 実験動物は Wistar 系ラットを用い, 右頭頂部に closed cranial window を作成し, 頭蓋内圧, 逆行性灌流圧を調節可能とし, 落射型蛍光顕微鏡下に中大脳動脈の分枝から上大脳静脈の分枝を生体観察した. 逆行性灌流を行うと, 灌流圧5~15mmHgでは, 静脈間シャント血流を認めるものの, 脳細動脈への逆流は認められず, 灌流圧15~30mmHgでは, 細静脈から細動脈への灌流が最も良好に認められた. またその際の逆行性脳灌流量は静脈間シャントにより一定しなかった. 一方灌流圧30~50mmHgでは, 脳が膨隆し微小循環は停止した. 逆行性脳灌流時の脳微小循環は, ラットの場合頭蓋内圧3±2cmH2O (正常頭蓋内圧範囲内), 逆行性灌流圧15~30mmHgで観察され, これらを至適灌流条件と判断した. またその血流速度は非常に緩やかであり, 逆行性脳灌流法では灌流時間の遷延により脳虚血に陥る可能性があることが示唆された.