特発性膜性腎症 (IMN) に対しては,副腎皮質ステロイド剤や免疫抑制剤などが治療に用いられることが多いが,その評価に関しては統一的な見解はいまだない。本稿では,わが国の小児におけるIMN症例の臨床経過および治療の現況とそれらの特徴を集約してとらえ,諸外国の症例と対比させながら,日本人小児のIMNに対する管理方針について論じた。
成人例よりも自然寛解率が高く,とくに欧米の患児よりも予後の良好な日本人小児のIMNの治療指針としては,現段階では次のように考えるのが妥当であろう。すなわち,ネフローゼ症候群を呈さない症例の場合は,一過性の可能性が高く,腎機能障害を残す危険性もきわめて低いので,ステロイドあるいは免疫抑制剤の治療を要しない。すなわち,対症療法のみを行う。ネフローゼ状態がある期間続く場合には,腎機能障害を呈する危険もありうるので,あるいは,ネフローゼ症候群そのものによる合併症を抑止する目的で,ステロイド剤を試みてもよい。また,免疫抑制剤については,日本人小児には原則として使用すべきではないと思われる。