日本循環器管理研究協議会雑誌
Print ISSN : 0914-7284
心血管病変に対する糖尿病及び糖代謝異常のリスク
田辺 直仁林 千治豊嶋 英明和泉 徹宇佐美 明男斎藤 玲子関 奈緒宮西 邦夫村山 直也川崎 聡鈴木 宏山本 朋彦船崎 俊一相沢 義房
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1998 年 33 巻 2 号 p. 151-157

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抄録

心血管系における動脈硬化の危険因子としての糖代謝異常の意義について, 2つの研究を通して検討した。
1. 冠動脈硬化性心疾患 (CHD) の危険因子に関する症例・対照研究本研究では糖尿病の代わりに, 血清フルクトサミン値 (FRA) を糖代謝異常の指標として用い, 冠動脈造影によってCHDと診断された60歳以下の男性患者130名と, 年齢をマッチさせた260名の男性対照群の問で比較した。FRAが285μmol/l以上であった場合を高FRAとして, 年齢群別にその陽性率をCHD群と対照群で比較した結果, 40歳以下の若年群 (症例群 : 41.9%, 対照群 : 5.8%, p<0.01), 41~60歳の壮年群 (症例群 : 33.3%, 対照群119.5%, p<0.01) いずれにおいても症例群で有意に高率であった。しかし, 対照群との差は若年群でより大きかった。他の要因を補正した高FRAのCHDに対するオッズ比も, 若年群で特に高い値を示した (若年群のオッズ比と95%信頼区間 : 18.70, 3.34~104.64;壮年群のオッズ比と95%信頼区間 : 2.51, 1.22~5.18) 。2. エコーを用いた頚動脈硬化に関する研究
頚動脈硬化病変 (粥腫) 陽性率を, 35歳以上の糖尿病患者81名と, 二つの対照集団 (農村住民238名, 65歳以下の男性都市勤労者175名) の問で比較した。男女共に, 65歳以上の老年群では糖尿病群と対照群 (農村住民) の問で陽性率には有意差を認めなかった。しかし対照群では若年になるほど明らかに陽性率が低くなったのに対し, 糖尿病群では若い年齢群でも過半数に病変が認められた。
以上の2つの研究より, 糖尿病などの糖代謝異常は心血管系における動脈硬化病変早期発現の強いリスクになると考えられた。

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