感染症学雑誌
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乳牛におけるVero毒素産生性大腸菌 (VTEC) の汚染状況および分離菌株の血清型
古畑 勝則坂田 慎治岡本 倫明山本 静雄本田 政幸甲斐 明美伊藤 武原 元宣田淵 清福山 正文
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1999 年 73 巻 5 号 p. 445-450

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抄録

ヒトのVero毒素産生性大腸菌 (VTEC) 感染症における感染源や感染経路を明らかにするため, 1996年6月から1997年3月までの期間に北海道, 福島県, 神奈川県および沖縄県で飼育されていた健康な乳牛の新鮮糞便を採取し, VTECの分離を試みた成績は以下の通りである.
1) 供試した251例中68例 (27.1%) からVTECが分離された. その内訳は, 北海道50例中14例 (28.0%), 福島県50例中13例 (26.0%), 神奈川県51例中20例 (39.2%), 沖縄県100例中21例 (21.0%) からそれぞれVTECが分離され, 地区別において差異は認められなかった.
2) 分離された85株について毒素型別と血清型別を行ったところ, VT1産生株とVT2産生株がそれぞれ33株 (38.8%), VT1とVT2両毒素産生株が19株 (22.4%) あった. また分離株の血清型を毒素型別にみると, VT1産生株ではO111: H-が最も多く認められた. VT2産生株ではO2: H12, O2: H29, O2: H-, O82: H8, O82: HUT, O153: H19, O153: H42, O153: H-などに認められた. また, VT1とVT2両毒素産生株ではO153: H19に比較的多く認められた.
以上のように, ヒト由来VTECの毒素型や血清型と一致する菌株が乳牛からも多く分離されたことから, ヒトVTEC感染症と乳牛との関係が重要視された.

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