日本顎関節学会雑誌
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顎変形症患者における下顎頭骨形態, 関節円板転位がタッピング運動に及ぼす影響
山田 一尋小栗 由充晝間 康明花田 晃治澤田 宏二河野 正司林 孝文伊藤 寿介
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2000 年 12 巻 1 号 p. 88-97

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抄録

近年, 顎関節の変形性関節症 (osteoarthritis: OA) と顎顔面変形の関連が報告されているが, OAの臨床像は多様で臨床的対応が遅れる場合がみられる。そこで, 咬合基準位として用いられているタッピング運動と顎関節病態の関連から, 顎変形症患者の顎関節OAの臨床的指針を探ることを目的として、当科を受診した顎変形症患者でヘリカルコンピュータ断層撮影法 (CT), 顎関節磁気共鳴映像法 (MRI), 6自由度顎運動測定を施行した女性48名 (平均年齢20.5歳) の下顎頭骨形態とタッピング運動の関連を検討した。
両側骨変形群では変形, 断裂・粗造が多く, 片側骨変化群では変形が最も多く見られた。また, 両側骨変化群, 片側骨変化群共に非復位性円板前方転位が高い割合でみられた。
下顎頭骨変化の有無によるタッピング終末位の比較では, 両側骨変化群の切歯点と顆頭点が骨変化無し群に比べ不安定を示した。関節円板前方転位の有無によるタッピング終末位の比較では, 切歯点は両側非復位群あるいは復位+非復位群で不安定で, 顆頭点は非復位群では下顎頭骨変化を伴い不安定を示し, 復位群では骨変化有り群が骨変化無し群に比べ有意に大きい変位量を示した。また, 前後的顎顔面形態によるタッピング終末変位量の差は見られなかった。
以上から, 顎変形症患者における切歯点および顆頭点のタッピング終末位変位量は顎関節病態に密接に関連していることが示唆された。

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