2000 年 29 巻 2 号 p. 385-389
高分子製人工弁の加速耐久試験方法に関してはISOでも規格が確立されていない。そこで, Jellyfish弁を使用し, 通常行われている圧力及び温度を基準とした加速耐久試験が高分子製人工弁に適用可能かを検討した。その結果, 1200BPMで行った加速耐久試験と105BPM程度で行った慢性動物実験では, 弁破断部位及び弁が破断に至るまでの開閉回数のいずれも一致しなかった。この弁破断位置の違いの原因を究明するために, 有限要素法を用いて力学的な解析を行った。その結果, 加速耐久試験では応力集中する部位で脆性破壊しているのに対し, 慢性動物実験では, 閉鎖時の変形によってひずみの集中する部位で延性破壊していることがわかった。したがって, 両者の破壊メカニズムは根本的に違うものであることがわかり, 現行のISOで定められた加速試験では, 高分子製弁の耐久性予測に限界があることが示唆された。