2000 年 29 巻 2 号 p. 411-418
新たに開発されたBIOREX®《AM-BC-X》膜は, 膜最外層の孔径が小さい対称グラディエント孔構造を有するために, 膜外部から体内へのエンドトキシン等汚染物質の逆流入を抑制しつつ, 体内不要物の高除去能を発現できる。今回, 孔構造の異なる4種類の膜 ((1) 均質膜, (2) グラディエント構造膜, (3) 逆グラディエント構造膜, (4) 対称グラディエント構造膜) を試作し, 各々の透析器内で起こる物質透過現象を定量的に把握した上で孔構造と物質透過の異方性との関係について検討し, 《AM-BC-X》膜の上記特性を検証した。その結果, 中空糸両側が緻密であり, かつ内側よりも外側の方が緻密である《AM-BC-X》膜では, 外側から内側よりも, 内側から外側に物質が移動しやすかった。このような孔構造の非対称膜は, 血液からは病因物質を除去しやすく, 透析液から血液中へのエンドトキシン等汚染物質の逆侵入は起こりにくい, 理想的な孔構造の透析膜であると考えられた。