日本透析医学会雑誌
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血液透析患者の動脈硬化に及ぼす諸因子の検討
血清MCP-1の重要性
草野 研吾中村 一文中村 陽一大江 透草野 仁草野 功
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2000 年 33 巻 9 号 p. 1245-1249

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抄録

近年, 動脈硬化の発症にmonocyte chemoattractant protein-1 (MCP-1) が関連していることが報告されている. さらに透析患者においてはMCP-1を含む種々のchemokineが上昇していることが報告されている. 今回, 透析患者における動脈硬化進展因子の解析を行い, 血中MCP-1の関与を検討した. 対象は透析導入前からの動脈硬化の進展を除外するため糖尿病性腎症と高血圧性腎硬化症を除いた維持透析患者52例 (男性29例, 女性23例, 年齢56±10歳, 透析期間10.1±7.4年) である. 動脈硬化度は頸部エコーでの左右頸動脈8点 (計16点) から得られた内膜中膜複合壁厚 (IMT) の平均値を用いた. 動脈硬化の進展因子として年齢, 透析期間, 左室肥大の有無, 高血圧歴, 喫煙歴, 血清脂質, アポ蛋白分画, ホモシステイン, Lp (a), 尿酸, フィブリノーゲン, 血清MCP-1濃度を用い検討した. その結果, 単変量解析ではIMTの平均値は年齢 (r=0.45, p<0.001), 血清MCP-1濃度 (r=0.45, p<0.001), 左室肥大の程度 (ρ=0.59, p<0.001), 喫煙歴 (ρ=0.41, p<0.05) と相関が認められたが, 他の因子には相関は認められなかった. 重回帰分析 (多重R=0.78) では, 左室肥大の程度, MCP-1濃度, 年齢, アポ蛋白A-1が独立した頸動脈硬化の進展因子として示された. 以上から透析患者において血清MCP-1濃度は頸動脈硬化の進展に関連した重要な因子であることが示された.

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