2000 年 2 巻 4 号 p. 181-187
イネにおけるアントシアニン生合成の転写制御遺伝子の発現解析に必要なトランジェントアッセイ系を, 常時材料を準備できるイネ完熟種子糊粉層で確立した. まず, 岡大資生研紫米 (RIB-PI) の完熟種子を用いて糊粉層を露出するための吸水時間と温度を検討した. 露出できた糊粉層にトウモロコシのアントシアニン生合成の転写制御遺伝子, ClとB-Peruをパーティクルガンで導入したところ, アントシアニンのスポットが観察されたので, 両遺伝子を用いたトランジェントアッセイ系について至適条件を検討した. その結果, 28℃ で4時間吸水させて露出した糊粉層でアントシアニンのスポット数が最大になった. また, 導入するプラスミドの量は, ClとBPeruがともに5μgかClが5μgでB-Peruが10μgのときに, アントシアニンのスポット数が多くなった. 以上の結果から, イネの完熟種子糊粉層を用いたトランジェントアッセイとして, 28℃ で4時間吸水させて糊粉層を露出させ, C1とB-Pmをともに5μgずつ導入することによって, 安定的にアントシアニンを誘導できることが明らかとなった.