日本皮膚科学会雑誌
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原著
有棘細胞癌の治療における放射線療法の意義
川端 康浩藤田 悦子湧川 基史相馬 良直豊田 健嗣山根 謙一多田 弥生帆足 俊彦出月 健夫門野 岳史玉置 邦彦
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2001 年 111 巻 2 号 p. 147-155

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抄録

皮膚悪性腫瘍に対する放射線療法は,術前放射線療法,術中放射線療法,術後放射線療法,放射線単独療法の4つに大別することができる.今回,照射目的の異なるこれらの放射線療法を行った有棘細胞癌患者4例を供覧し,その目的,適応について考察した.症例1:81歳,女性.左腎部の巨大な有棘細胞癌(T4N1M0,病期III)に対し,術前放射線療法により腫瘍を縮小させてから根治手術を行った.症例2:68歳,男性.有棘細胞癌の左肘窩リンパ節転移に対し(T4N1M0,病期III),腫瘍切除後,開創のまま術中放射線療法を行った後,閉創した.症例3:59歳,男性.頭部の熱傷瘢痕上に生じた有棘細胞癌(T3N0M0,病期II)に対し,切除・植皮後,術療法として放射線照射を行った.症例4:89歳,男性.後頭部の有棘細胞癌(T2N1M0,病期III)に対し,放射線療法単独で治療し,腫瘍はほぼ消退した.術前,術中照射の目的は,腫瘍縮小による手術適応の拡大と手術操作時の癌細胞の播種の抑制である.術後照射は結果的に根治術が不可能であった場合などに,補助療法として行われる.放射線単独療法は重篤な基礎疾患や全身状態不良のため,あるいは患者の手術に対する同意が得られない場合が適応となる.放射線療法は決して消極的な治療ではなく,少なくとも有棘細胞癌に対しては,根治性を十分に有する治療法である.我々皮膚科医は皮膚悪性腫瘍を取り扱う医師として,手術や化学療法のみならず,種々の放射線療法の適応および効果にも十分に精通し,個々の症例に最も適した治療法を選択していかなければならない.

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© 2001 日本皮膚科学会
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