感染症学雑誌
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施設内流行MRSAに認められた多剤耐性プラスミドの性状と機能
有働 武三
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2001 年 75 巻 5 号 p. 382-389

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抄録

本学病院における臨床由来MRSA (メチシリン耐性黄色ブドウ球菌) に高頻度に検出される35.5kbのプラスミド (pCL4) の性状およびその機能につき遺伝学的手法による解析を試みた.本プラスミドは菌株によってコードされる耐性遺伝子に多少の相違を認めるが, いずれもGentamicin, Tobramycin, Kanamycin, Amikacin, Astromicin, そして低レベルながらArbekacin耐性に関与する, いわゆる多剤耐性-とくにMultiple-Aminoglycoside (MAG) 耐性-プラスミドとしての共通性状を有する. 接合実験によれば, かなり高い頻度 (>10-6CFU) での本プラスミドの伝達を予想させるMAG耐性株が得られ, これらの菌株 (Transconjugant) につきプラスミドをスクリーニングするとプラスミド保有株と非保有株がほぼ半数ずつ存在することがわかった. プラスミド保有株は43℃で培養することによりMAG耐性を保ったままプラスミドが脱落する現象がみられた. 一方, 精製プラスミドを用いた電気穿孔法による形質転換では, 得られたMAG耐性株 (Transformant) 数株のほとんどはプラスミド保有株であったが, Transconlugantsと同様43℃培養によるプラスミド除去処理によりMAG耐性を維持したプラスミドの脱落を認めた. 以上の結果は本プラスミドpCL4が伝達能を有し, またプラスミド上のMAG耐性遺伝子はトランスポゾンとしての機能単位にコードされていることを示し, 本多剤耐性遺伝子の施設内MRSAへの広範な拡散を予想しうるものであった.

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