感染症学雑誌
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中耳炎および敗血症例から分離されたVibrio vulnificusのPCR法による同定
佐藤 征三浦 富智齋藤 雅明月足 正辰本郷 俊治戸羽 隆宏
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2001 年 75 巻 4 号 p. 307-313

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抄録

弘前市医師会成人病検診センターにおいて中耳炎患者の耳漏からTCBS寒天培地上で白糖非分解性コロニーとして分離された株を, 23S rRNAの菌種特異的領域を増幅させるnested PCR法でVibrio vulnificusと同定した.倉敷中央病院において敗血症患者血液から分離され, 表現形質を基に既にV. vulnificusと同定されていた6菌株も同様のPCR法でV. vulnificusと同定された.細菌同定キットAPI20Eをこれらの分離株の同定に適用したところ, いずれも相対同定確率99.8%でV. vulnificusと同定できたが, 3種類の異なるプロファイルを与えた.耳漏分離株からも血液分離株同様にcytotoxin-hemolysin遺伝子が検出された.従って, 迅速診断が求められる本菌の同定には, 約4時間で確実な成績が得られるcytotoxin-hemolysin遺伝子を検出するPCR法が有効であると考えられた.
これまで, V. vulnificus感染症の北限は秋田県とされていたが, 青森県内でも本菌感染症が確認された.また, 我々の知る限り, 本菌が中耳炎の起因菌として患者の耳漏から分離された例は無い.

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