季刊地理学
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水稲単作地域における米生産調整の推移と地域農業条件
岩手県東和町を事例として
関根 良平金 〓哲大場 聡
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1999 年 51 巻 4 号 p. 273-290

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抄録

本研究は, 戦後の大規模開田地域にあたり, 水稲を地域農業の中心としてきた岩手県東和町を事例とし, 米生産調整の推移を地域農業との関連から考察することを目的としている。
東和町における生産調整は, 戦後開田地域, 伝統的水田地域ともに, 牧草転作を主な対応として推移してきたが, 1990年代は牧草転作以外の対応を迫られている。農家個別的な農業経営が展開している開田地域では調整水田の増加が特徴的であるが, 飯米確保的傾向を強めている下層農家では粗放的な対応が増加している。
一方, 戦前からの水田地域では, 第二次農業構造改善事業によって設立された水稲生産組合の特性ごとに, 生産調整対応の推移に差異がみられる。組合機能が縮小し, 下層農家の脱農化が進行している館では粗放的な対応が増加しているのに対し, 組合が個別零細経営を温存させている中田では, 牧草に依存するものの極端に粗放的な対応がみられない。生産調整に対して集団的な対応をとる沖では, 組合農家の農地を有効に利用し, 高収益の見込める作物を導入することで, 牧草に依存しない生産調整対応が可能となっている。

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