日本家政学会誌
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防災視点をとり入れた住生活教育のあり方に関する研究
兵庫県内高校生の居住地別, 建物被害の有無別防災対応
佐々木 貴子小河 達之田中 洋子貴田 康乃
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2000 年 51 巻 2 号 p. 171-180

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抄録

兵庫県内高校生の自宅建物および自室内部の被害状況や地震による精神面への影響, 震災前後の防災対策に関する知識の有無や対策の有無等について, 居住地や建物被害の有無別に分析した結果, 以下のことが導き出された.
(1) 「被災地」では61%が「全壊・半壊・全焼・一部損壊」の建物被害を受けた.「被災地外」では「一部損壊」が11.5%みられた.
(2) 「被災地」で自宅に被害を受けた者は, 後片づけに対して大きな負担を感じていた.
(3) 「被災地」で自宅建物に被害を受けた者は, 地震による精神的な衝撃が強く, 1年の時が経過しても心の傷は癒えていなかった.
(4) 高校生の自室内には多くの家具類や家電機器類があり, 防災対策の必要性が認められた.
(5) 震災前, 高校生の大部分は防災対策に関する知識に乏しく, 対策も実施していなかったが, 震災後は知識や対策実施率が増加した.特に, 「被災地」ではその増加率が大きかった.
(6) 高校生の大部分は, 学校でも防災対策に関する学習を必要としている.
先に行った調査においても, また今回の調査においても, 防災対策に関する学習の必要性を多くの人々が支持していた.また今回の高校生の防災対策実施率の低さから考えても, いつ起こるかわからない災害に対して, 自分や家族, 地域の人々の生命を守るための防災教育を早急に行うことを痛感する.さらに, 災害にあった子どもへの心身の健康問題の支援.指導も見逃すことのできない今後の課題であると考える.

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