日本耳鼻咽喉科学会会報
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原発性免疫不全症を合併したペニシリン耐性肺炎球菌による小児反復性急性乳様突起炎の1例
福岩 達哉牛飼 雅人宮之原 郁代松根 彰志黒野 祐一
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2001 年 104 巻 11 号 p. 1089-1092

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抄録

ペニシリン耐性肺炎球菌 (PRSP) は難治性中耳炎の起炎菌として検出されることが多く, 抗菌剤耐性による感染の遷延化, あるいは反復性感染を引き起こすことが知られている. また, 中耳炎に続発する急性乳様突起炎は抗菌薬の普及によりまれな疾患となりつつあると言われているが, 発症すると重篤な合併症を伴う危険性が高いと言われている. 今回我々はPRSPを起炎菌とする急性乳様突起炎を反復した小児症例を経験した. 本症例は乳様突起炎を4回繰り返しており, その間に2回, 手術治療を施行した. 急性乳様突起炎が反復した原因としては, 当初, 起炎菌がPRSPであったことを第一に考えていた. しかし, 低γグロブリン血症が持続していたため免疫学的検索を行ったところ, IgG, IgA値の低下を認め, 原発性免疫不全症の一つであるCommon variable immunodefficiency (以下CVID) と診断された. 本症例は初発時年齢が6歳であり, それ以前には反復感染の既往がなかったことから, CVIDの発症によって乳様突起炎を反復したと考えられた. しかし反復性感染が乳様突起炎のみであり, 他に上下気道感染症などの合併症がないことを考えると, CVIDのみが反復性感染の原因ではなく, PRSPの存在も関係していると考えられた. 以上のことから, 反復性感染の原因検索に際しては耐性菌の存在を常に念頭に置きつつ, 同時に免疫不全症合併の可能性も考慮した検索が必要であることを認識させられた.

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