症例は75歳,男性.黄疸と心窩部痛を主訴に総胆管・肝内結石症の診断で入院となり,胆嚢摘出術・総胆管結石切石術,肝左葉外側区域切除術を施行した.さらに術後8日目に創口多開をきたし全身麻酔下に修復術を行ったところ,翌日心電図に陰性T波が出現した.心電図,心エコー所見で左前下行枝領域の急性心筋梗塞が疑われ,心臓カテーテル検査を行ったところ,左室造影で前壁中隔から心尖部,下壁にかけて壁運動低下を認めたが,冠動脈造影では有意狭窄は認めなかった.心筋シンチグラムでは,ユ123I-MIBGで心尖部,下壁の集積低下を認めたが201T1では集積低下は認めなかった.慢性期では心電図変化,左室造影での壁運動異常,シンチグラムでの集積低下は何れも改善していた.本症例は再度の手術に伴うストレスにより発生したstunned myocardiumと考えられ,周術期管理において心電図異常をきたした場合には虚血性心疾患との鑑別が重要と思われ報告した.