肝臓
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顆粒球除去療法を施行した重症型アルコール性肝炎の1例
上村 顕也小林 正明森 茂紀柳沢 善計
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2002 年 43 巻 7 号 p. 316-321

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抄録

症例は59歳, 女性. 大酒家. 約半年前より飲酒量が増加, 全身倦怠感, 黄疸, 下腿の浮腫, 体重増加を主訴として当院へ入院となった. 入院時現症では意識は清明であったが著明な肝腫大, 黄疸, 浮腫, 腹水徴候を認めた. 検査成績では多核白血球優位の白血球増加, 総ビリルビンの上昇, プロトロンビン時間の低下を認め重症型アルコール性肝炎と診断した. IL-6及び好中球の増加, 活性化作用を持つと考えられているIL-8が著明に上昇し, 顆粒球エラスターゼも高値を呈した. 腸管滅菌, 抗生剤投与に加えて白血球による直接的肝障害に対して顆粒球除去療法を, 高サイトカイン血症による重症化のネットワークを断つ目的で血漿交換, 血液濾過透析, ウリナスタチンの投与等を中心に治療し明らかな改善傾向を認めた. 全身状態の悪化とともに肝不全が再増悪したが, 病態の中心である白血球に対する治療が有効であり今後の治療法の検討も含め示唆に富む症例であった.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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