The Journal of JASTRO
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食道癌の放射線療法後または化学放射線療法後における心拡大に関する臨床的検討
笹本 龍太
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2002 年 14 巻 3 号 p. 153-160

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抄録

【背景・目的】近年, 食道癌に村する化学放射線療法は手術に匹敵するともいえる治療成績が報告されてきており, 今後それに伴う晩期障害が問題となってくることが予想される. 従来我々は5FU及び5FU+CDDPの少量持続静注併用放射線治療を行っているが, 長期生存例の中に心拡大を呈する症例を少なからず経験している, 今回その頻度と関遮因子を遡及的に明らかにすることを検討の目的とした.
【対象・方法】1期~IVA期までの食道癌症例中, 50Gy以上照射され6ヶ帰以上画像的な追跡が可能であった5蓋例を対象とした. 内訳は照射単独群16例, 化学療法併用群35例. 心拡大については照射前の心胸郭比 (CTR) と照射後最大のCTRの差, および10%以上の増加例 (有意な心拡大) について検討した. 胸水については中等量以上の貯留例を検討した. また, 心臓に対する照射面積と標的線量の積を心臓面積線量と定義し, CTRの変化との関連についても検討した.
【結果】いずれの治療群でも照射前に比して照射後にはCTRの有意な増加が認められた. 有意な心鉱大は全体で18%. 照射単独例で6%, 化学療法併用例では23%であり, 化学療法併用例で高頻度であった. 心臓面積線量0.4m2・Gy以上の症例では0.4m2・Gy未満の症例に比して有意にCTR増加が大きかった. 中等量以上の胸水貯留は5例 (10%) にみられ, 全例化学療法併用群であった.CTRの増加と共に胸水が増加する例が3例, 更にCTRの増加が胸水貯留に先行する症例が2例見られたことから, 胸水跡留には慢性心外膜炎に伴う心タンポナーデの関与が示唆された. 加えて, 右側のみの群留例がなく全例が左側あるいは両側性であったことから, 胸膜に対する照射の直接的な影響も推察された.
【結語】食道癌の放射線治療後, CTRが10%以上増加する例は重8%あり, 心臓に対する照射量と化学療法の併用が影響していた.中等量以上の胸水貯留は10%にみられ, 慢性心外膜炎に伴う心タンポナーデ及び放射線胸膜炎の関与が示唆された.

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© 1994 The Japanese Society for Therapeutic Radiology and Oncology
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