応用統計学
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2つの正規分布の同等性に関する尤度比検定の検出力特性に関する考察
竹本 康彦有薗 育生
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2002 年 31 巻 2 号 p. 141-162

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抄録

複数のパラメータにより定義される帰無仮説に関する一般的な検定方法に尤度比検定がある.この尤度比検定に関する一般理論において,帰無仮説のもとでの検定統計量の大サンプルを前提とした漸近的性質が明らかにされている.一方,対立仮説のもとでの検定統計量の漸近展開に基づく近似分布についても考察されている.ただし,サンプル・サイズの増加に対して大サンプルを前提とする漸近分布への収束の速度は必ずしも速くなく,これより有限サンプル・サイズのもとでの検定統計量の分布を漸近分布で与えることには近似精度上の問題があるということが知られている.すなわち,現実的な状況下でのこのような検定の設計問題や検出力特性の評価法については多くの課題が残されている.そこで本研究では,このような複数のパラメータにより定義される帰無仮説に関する問題の一つとして,2つの正規母集団分布の同等性に関する検定問題として正規2標本同時検定問題を考える.この正規2標本同時検定問題に関しては先に有薗らの成果により,尤度比検定における検定統計量の帰無仮説のもとでのより精度のよい近似分布が任意のサンプル・サイズに対応する形で与えられ,これにより精度のよい検定が設計されるに至った.ただし,これまでに有限サンプル・サイズのもとでの尤度比検定における正規2標本同時検定問題に関する対立仮説のもとでの検定統計量の近似分布やその近似分布に基づく検定における検出力特性の評価法について十分言及されてはいない.そこで,われわれはこの検定問題において,検定統計量の任意の仮説および任意のサンプル・サイズのもとでの近似分布に関して考察し,その近似分布に基づき検出力特性の評価にまで考察を広げるものとする.

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