昭和歯学会雑誌
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歯科矯正ボンディング用ブラケット材料の接着面二構造と組成に関する研究
藤島 昭宏齋藤 茂池田 訓子円谷 賢司前原 聡佐々 龍二宮崎 隆
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2002 年 22 巻 4 号 p. 379-389

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抄録

レジン添加型グラスアイオノマーセメントを用いた矯正用接着システムは, レジン系接着剤を用いた接着システムよりも接着性が低いことを報告してきたが, 市販矯正用ブラケットは多数存在し, ブラケットベース部の構造や歯質接着性に及ぼす影響についての研究は少ない.このため, レジン添加型グラスアイオノマーセメントに対して良好な接着性を有するボンディング用ブラケットを選択するには, ブラケットベース部の形状や形態などの構造や組成を調査する必要がある.このため本研究では, 3種類の素材のボンディング用ブラケットを用い, ブラケットベース部の2種類のSEM像 (二次電子像, 反射電子組成像) による形状および形態観察, 画像解析による接着面積, EDX分析とFT-IR分光分析による組成分析を行い, ボンディング用ブラケットの評価を行った.メタルブラケットは, 1種類のチタン製ブラケットを除き他はステンレス鋼製であり, 表層に金銀コーティングしてあるものも認められた.ブラケットベース部の構造は微細なワイヤをメッシュ状に結合してあるものと, 小さな菱形の突起が集合しているものがあったが, 両者とも機械的維持性は他のブラケットに比べ良好であった.セラミックブラケットは, アルミナもしくはジルコニアで構成され, ブラケットベース部の構造は比較的単純で, 機械的維持性は最も小さかった.プラスチックブラケットでは, 3種類のプラスチック組成においてエンジニアリングプラスチックのポリカーボネートが検出され, ガラスフイバー, 微粒子シリカフィラーで複合化されたブラケットも認められた.本研究から, 各素材のボンディング用ブラケットにおいてベース部の構造が大きく異なることが認められたため, 歯科矯正臨床においてレジン添加型グラスアイオノマーセメントを適用する場合は, ボンディング用ブラケットの選択に, より多くの注意を払う必要があることが示唆された.

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